片野優, 須貝典子/祥伝社新書
都市伝説をWikipediaで調べてみると、次のように説明されていた。
都市伝説(としでんせつ、英: Urban legend)とは、近代あるいは現代に広がったとみられる口承の一種である。大辞林第二版には「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもの」と解説されている。
「都市伝説」(2024年5月10日 (金) 13:12 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。
個人的には、都市伝説と聞いて思い浮かぶ話の多くはフィクションだ。
「ベッドの下の男」や「エイズ・メアリー」は実際の事件ではなく、「きさらぎ駅」や「八尺様」などの怪談は2ちゃんねるで創作された話である。
そのような話を期待して本書を読むと、少しがっかりするかもしれない。
というのも、本書は創作された都市伝説ではなく、実際に起きた事件や実在する人物、物にまつわる話が中心に解説されているからだ。
それでも、本書の内容には面白いものが多い。比較的有名な話が多いが、どの話も細部まで丁寧に解説されており、資料としての価値を感じられる。
オカルト的な話は全5章のうち2章まで。たとえば「暗い日曜日」や「泣く少年」、映画で有名な「アナベル人形」や「エンフィールド事件」などについて、作品が生まれた背景や当時の新聞記事などを基に解説している。特にウォーレン夫妻の人物像は、映画とはかなり異なる印象を受けた(本書の内容が事実かどうかは分からないが)。
「ファティマの奇跡」は、聖母マリアが顕現した当時の状況や人々の様子など詳しく解説されており、非常に面白く読めた。さらに日本でも同じような現象が起きていたことを初めて知り驚いた(日本で降臨した聖母は日本語で語りかけたのだろうか…)
3章以降は実際の人物や事件に焦点を当てた話になっている。
「血の伯爵夫人」は本当に多くの処女を殺したのか、「切り裂きジャック」は果たして誰だったのか、まるでミステリのように歴史から謎を解き明かそうと追及していく。
エジソンとニコラ・テスラの「電流戦争」の解説は、都市伝説からはやや離れた内容だったが、知識として興味深かった。
最後はゴーレムとホムンクルスについて触れられている。ゲームなどでよく扱われる題材だが、こういったものを改めて知る良い機会となった。